化粧品の裏面にずらりと並ぶ成分名。あの「全成分表示」が当たり前になったのは、実はそれほど昔のことではありません。2001年4月の薬事法改正で義務化されるまでは、限られた成分だけを表示する「指定成分表示」の時代が続いていました。この記事では、全成分表示が始まった経緯、それ以前の表示との違い、成分名のつけ方のルール、そして海外の表示との関係を、できるだけ中立に整理してみます。
30秒でわかるまとめ
| 結論 | 化粧品の全成分表示は2001年4月の薬事法改正で義務化されたとされています |
| それ以前 | アレルギーなどのおそれがあるとして指定された成分(表示指定成分)だけを表示する仕組みでした |
| 表示名称 | 日本化粧品工業連合会(現・日本化粧品工業会)がまとめた「成分表示名称リスト」に基づくのが一般的です |
| 海外との関係 | 国際的な名称であるINCI名をもとに日本語化されたものが多く、対応表で相互参照できます |
| 読み方のコツ | 配合量が多い順に並び、1%以下は順不同で記載できるルールが知られています |
全成分表示が始まる前は、どうなっていたのか
1980年ごろから、旧厚生省はアレルギーなどの皮膚トラブルを起こすおそれがあるとされた成分を「表示指定成分」として定め、それらが配合されている場合に限って容器へ記載することを求めていました。指定された成分は当初100種類ほどで、その後、香料を含めて少し追加されたと言われています。
つまり当時の表示は「注意してほしい成分のリスト」であって、中身の全体像を示すものではありませんでした。表示指定成分が書かれていない製品が「何も入っていない」ように見えてしまう、という誤解も生まれやすかったようです。
また、この時代の化粧品は原則として品目ごとに国の承認を受ける仕組みだったため、メーカーが自由に処方を組むことにも一定の制約があったとされています。
2001年4月の薬事法改正で何が変わったのか
2001年4月に施行された薬事法(現在の薬機法)の改正では、化粧品の規制のあり方が大きく見直されました。ポイントは大きく二つあると整理されることが多いです。
一つ目は、化粧品が「承認制」から「届出制」へ移行し、配合してはいけない成分や上限のある成分をルールで定めたうえで、その範囲内であればメーカーの責任で処方できるようになったこと。二つ目は、その代わりに、配合したすべての成分を容器や外箱に表示することが義務づけられたことです。
「国が事前に細かく審査する」から「メーカーが自己責任で作り、消費者が情報を見て選べるようにする」という考え方への転換だった、と説明されることがあります。全成分表示は、この転換とセットで導入された情報開示の仕組みと言えそうです。
全成分表示は「危ない成分を知らせるため」というより、「何が入っているかを誰でも確認できるようにするため」の制度として導入されたと理解しておくと、表示を読むときの前提が整いやすくなります。
成分名はどうやって決まっているのか
全成分表示に使われる名称は、各メーカーが好きに決めているわけではありません。日本化粧品工業連合会(2023年に日本化粧品工業会へ改組)が作成している「化粧品の成分表示名称リスト」に登録された名称を使うのが一般的とされています。
このリストがあることで、同じ成分がメーカーごとに違う名前で書かれる、という混乱を避けやすくなっています。新しい原料を使う場合は、メーカー側がこのリストへの登録を申請する流れになると言われています。
表示の並び順にもルールがある
成分は原則として配合量の多い順に記載し、配合量が1%以下の成分については順不同で記載してよい、というルールが知られています。また、着色剤は配合量にかかわらず末尾にまとめて記載できるとされています。
そのため、表示の後半に並ぶ成分の順番から配合量の大小を読み取るのは難しい、と考えておくのが無難です。詳しい読み方は成分表示の読み方の記事でも整理しています。
海外の表示(INCI名)との関係
海外の化粧品では、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)と呼ばれる国際的な成分名称が広く使われています。米国の業界団体が管理しているもので、欧米を中心に多くの国や地域で採用されていると言われています。
日本の成分表示名称は、このINCI名をもとに日本語化されたものが多いとされます。たとえばINCIで「Water」と書かれる成分は日本では「水」、「Glycerin」は「グリセリン」といった具合です。ただし、すべてが一対一で対応しているわけではなく、日本独自の名称や、翻訳のしかたが異なるものもあると言われています。
海外製品の表示を読むときは、INCI名との対応表を参照すると照らし合わせやすくなるかもしれません。
医薬部外品(薬用化粧品)は化粧品とは別枠の制度で、全成分表示は法律上の義務ではなく、業界の自主基準として表示されているケースが多いとされています。詳しくは医薬部外品と化粧品の違いもご覧ください。
よくある質問
- 表示指定成分は今も使われている言葉なのですか?
- 制度としては2001年の全成分表示への移行で役割を終えたとされています。ただ「旧表示指定成分」という言い方で、当時のリストを指して使われることは今もあるようです。
- 全成分表示があれば、配合量まで分かりますか?
- 配合量そのものは表示されません。多い順という原則から大まかな傾向を推測できる程度で、1%以下は順不同のため後半の順番は目安になりにくいと考えられます。
- 海外のINCI名と日本の表示名称は完全に同じですか?
- 多くは対応していますが、すべてが一対一ではないとされています。同じ成分でも名称の切り分けが違うことがあるため、対応表で確認するのが確実かもしれません。
まとめ
化粧品の全成分表示は、2001年4月の薬事法改正で承認制から届出制へ移るのと引き換えに義務化された仕組みだと言われています。それ以前は注意成分だけを記す指定成分表示でした。名称は業界団体の成分表示名称リストに基づき、海外のINCI名と対応づけられています。表示は「危険を知らせる印」ではなく「何が入っているかを確認できる窓」として眺めると、落ち着いて読みやすくなるはずです。

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