「天然由来」「植物由来」表示のカラクリと読み方

「天然由来成分○%」「植物由来」「ナチュラル処方」。パッケージでよく見かける言葉ですが、この「由来」という二文字には、意外と幅のある意味が含まれています。原料が天然であっても化学的な処理を経ている場合が多いこと、国際的な指標であるISO 16128の考え方、そして「天然だから安全」「合成だから危険」とは限らないという整理。この記事では、こうした表示のカラクリを中立に読み解いてみます。

目次

30秒でわかるまとめ

結論「由来」は原料の出発点を示す言葉で、加工の有無や安全性を示すものではないと考えられます
「天然由来」の幅植物油を化学的に変化させた成分なども「天然由来」に含まれるのが一般的です
ISO 16128天然指数・天然由来指数などを計算するための国際的な指針で、認証や安全性の基準ではありません
日本の扱い「天然」「自然」の表示に法的な定義はなく、誇大表示にならない範囲で各社が使っているとされます
読み方天然か合成かよりも、その成分が肌に合うか、処方全体でどう働くかを見る方が実用的です

「由来」という言葉が意味する範囲

「植物由来」と聞くと、植物から搾ったものをそのまま入れている、というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし実際には、「由来」は原料の出発点を指す言葉として使われるのが一般的で、その後にどんな加工を経たかまでは含まれていません。

たとえば、植物油から取り出した脂肪酸を、化学反応によって別の分子に変えた成分は、化粧品の世界では広く使われています。洗浄成分や乳化成分の中には、こうして作られたものが少なくありません。出発点が植物なので「植物由来」と表現できる一方で、最終的な分子は自然界にそのまま存在するものではない、というケースが多いと言われています。

これは「だまし」ではなく業界で共有された用語の使い方ですが、消費者が想像する「天然」と表示上の「天然由来」にはズレが生まれやすい点は知っておいてもよさそうです。

💡 ポイント

「天然由来」は「加工していない」という意味ではない、と覚えておくと表示を落ち着いて読めます。逆に言えば、加工されていること自体は品質の低さを意味するわけでもありません。

ISO 16128という国際的な「ものさし」

天然やオーガニックをうたう表示が増える中で、国や地域ごとにバラバラだった考え方をそろえるために作られたのが、ISO 16128という国際規格です。2016年から2017年にかけて、用語の定義を扱うパート1と、指数の計算方法を扱うパート2が発行されたとされています。

この規格では、成分を「天然成分」「天然由来成分」「オーガニック成分」「オーガニック由来成分」などに分類し、それぞれの割合をもとに「天然指数」「天然由来指数」といった数値を計算する考え方が示されています。パッケージに「天然由来成分95%」と書かれている場合、こうした計算方法に基づいていることがあると言われています。

ISO 16128が「していないこと」

ここで大切なのは、ISO 16128はあくまで計算のためのガイドラインであって、認証制度ではないという点です。第三者が製品を審査してマークを与える仕組みではなく、メーカーが自社で指数を算出して表示に使うものとされています。

さらに、この規格は安全性や環境への影響、肌へのやさしさを評価するものではありません。指数が高いことは「原料の出発点が天然である割合が高い」ことを示しているだけで、それ以上の意味は持たない、と規格自身が断っていると言われています。

日本では「天然」表示に定義があるのか

日本の化粧品制度では、「天然」「自然」「植物性」といった言葉に法律上の明確な定義はないとされています。景品表示法などの観点から、実態とかけ離れた誇大な表現は問題になり得ますが、「何%以上なら天然と書いてよい」といった数値基準は設けられていないのが現状と言われています。

そのため、同じ「天然由来」という言葉でも、メーカーによって計算の考え方や含めている範囲が異なる可能性があります。ISO 16128に準拠していると明記されている場合は、その計算方法に沿っていると読み取れますが、明記がない場合は自社基準と考えておくのが無難です。「無添加」「オーガニック」といった表示についても、同じような構造があります。詳しくは「無添加」「オーガニック」「フリー」表示の見方で整理しています。

「天然=安全」「合成=危険」とは限らない理由

天然由来という言葉に安心感を覚えるのは自然なことですが、成分の安全性は「出どころ」ではなく「その物質がどんな性質を持ち、どれくらいの量で使われているか」で決まる、というのが一般的な考え方です。

たとえば、植物や精油の中には、人によってかぶれや刺激の原因となるものが知られています。天然であることと、誰の肌にも合うことは別の話です。一方で、合成された成分の中には、不純物が少なく品質が安定しやすいという特徴を持つものもあります。

もちろん、合成だから必ず安全というわけでもありません。天然であれ合成であれ、化粧品に使える成分は配合できる上限や使用上の条件が制度で定められており、その範囲内で各社が処方を設計しているとされています。「天然か合成か」という二分法よりも、「自分の肌に合うか」「処方全体としてどう設計されているか」を見る方が、実用的な判断につながりやすいと言えそうです。

📝 メモ

香料についても「天然香料なら安心」というイメージがありますが、天然の精油にはアレルギーの原因となり得る成分が含まれることが知られています。詳しくは香料の記事もご覧ください。

よくある質問

「天然由来成分100%」と書かれていれば、すべて未加工の成分ですか?
そうとは限りません。「天然由来」には化学的な処理を経た成分が含まれるのが一般的なため、「出発点がすべて天然の原料である」という意味で読むのが近いと考えられます。
ISO 16128に準拠した製品は、認証を受けているのですか?
ISO 16128は計算方法の指針であり、認証制度ではないとされています。第三者認証を受けているかどうかは、別の認証マークの有無で確認する必要があります。
敏感肌なら天然由来の製品を選んだ方がいいですか?
一概には言えません。天然の成分にも刺激やアレルギーの原因となるものがあるため、「天然かどうか」より「自分に合わない成分が入っていないか」を成分表示で確認する方が実用的とされています。読み方は成分表示の読み方で整理しています。

まとめ

✅ この記事の結論

「天然由来」「植物由来」は原料の出発点を示す言葉で、加工の有無や安全性を保証するものではないと考えられます。ISO 16128はその割合を計算するための国際的な指針であり、認証でも安全性の基準でもありません。日本では「天然」表示に法的な定義がないため、各社の基準が混在しています。天然か合成かで線を引くのではなく、成分ひとつひとつと処方全体を眺める姿勢が、表示に振り回されないコツと言えそうです。

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この記事を書いた人

化粧品・シャンプー・日用品の成分を、公的データにもとづいて中立的に解説しています。「怖いかどうか」ではなく「自分に合うかどうか」で選べるお手伝いをするのが私たちの仕事です。

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